観光立国、スポーツ大国(00/05/02)

 今日からは、少しずつ勢力範囲を拡大していかないといけない。(オレは猫か??)

 10時からホテル主催の「オールドタウンウォーク」があるというので、参加してみることにした。
 このホテル、その昔、スペイン人が建てたものなのだが、なかなか文化PRに力を入れている。
 チェックインの時にもらったペーパーには、ロビーで過去の歴史写真を展示してるから見てくれだとか、どのレストランには何時に誰々が来て演奏するだとか、毎日、午前には「ウォーク」、4時からはスペイン語教室をやっているから来てくれだとか書いてある。

 


 で、その一つに参加してみようと思った訳。
 (何だか仕事癖が抜けないね)

 参加者は5人。アメリカのおばちゃん3人、フランスのおっさん1人、それに僕。
 2時間半のコースなんだけど、これがなかなかよかった。要塞や銅像や博物館だけでなく、有名なお店なんかも、ユーモアを交えて色々案内してくれた。
 まさに入門コースはこれでバッチリという秀れモノ。



          


 ソビエト連邦なきあとのキューバは、中国やベトナム程ではないにせよ、ゆるやかに「解放」への道を歩んでいる。
 個人の経済活動については、両国の様に一線を越える気配はまだないが、観光については、相当に本気で、その資質もとても高いと見た。
 さっき言ったホテルのサービスもそうだし、欧米の多くの歴史都市がやっている、旧市街の観光地化、ファッションセンター化の様なことについても取り組んでいる。
 で、お世辞ではなく、後者は、すでに世界でもトップクラスの先進事例といえる様な水準にあると思う。
 観光ゾーンでは、歴史的な建築物の1階部分の多くがおしゃれで稀少性のある店舗になっている。
 便乗して、個人の絵や彫刻を売ってる奴もいる。
 とにかくイイ店、ユニークな店が多いのだ。
 レストランやホテルのほとんどは国営だっていうけど、だとすれば、どうやってこんなにうまく民活を導入できてるんだろうか?
 日本の自治体はちょっと研究すべきだと思う。

          

        




 でも考えて見れば、この国にとっては、観光ほどおいしい産業はない。
 まず素質が高い。
 そして、国家をキューバ観光株式会社だと考えれば、べらぼうに人件費は安いし、利益率が高い。
 例えば今日のホテル所属のガイド氏は5名の参加費(一人10ドル)にチップを合わせ、軽々と半年分の一人当たりGDPをゲットした。
 たった2時間半で。
 個人の収入になったのはチップだけかも知れないが、にしても、平均月収くらいにはなる。
 それ以外は国がもってってるのだろうから、これ程楽な外貨稼ぎはない
 一人の観光客が仮に(ホテル代を含め)千ドル落とせば、原価や固定費が3分の1、一人の月収が11ドルとして、60人に月給が払える。
 言い換えれば5人を年間養える。
 とりあえずベースアップはなしとして、1100万の国民を養うのに必要な観光客は220万人。
 もうけっこうイイ線まで来てるじゃん(今は140万人)。
 計算どうりかどうかは別にして、本気になるのは当然だよね。

 もう一つ、観光客ともてなす側の利害がうまくいっている例を。
 ホテルのメイドはチップのお礼に、自分の文章、つまりはちょっと間違った英語でメッセージを残してくる。
 「今日はたくさんのプレゼント有り難う(あげたチップは75セント!)。私、一生懸命おそうじしたわ。あなたにサービスできてとっても光栄です。いいハバナの休日を過ごして下さいね  エレナ」みたいな。(以降も毎日違う文章)
 彼女たちにとって、チップ収入がおいしいのは分かるけど、こちらも悪い気はしない。
 で、「君がどんな人なのか、似顔絵を買いといてくれ」とか残しとくと、面白がって、ちゃんと返してくれたりする。
 この遊び、結構、楽しめますよ。

 にしても、一応観光業のはしくれにも加わっている者として、社会主義国に学ぶべき点があるとは思ってなかったな。
 恐るべしキューバ。
 観光の国としての前途は洋々だろうな。
 治安もいいし(悪い奴はいるのだろうけど少なそう)。
 何だかすっかり仕事モードだけど。


 ツアー解散後は、中華街で昼食をとることにした。
 キューバの街を歩いていると、「ハポン」(日本)よりも「チーノ」(中国人)と呼ばれることの方が多い。
 「メヒコ」(メキシコ)ってのもたまにある 
 で、「チーノ」っていうのは、かっては「三国人」みたいな蔑称だったらしいけど、今はそうでもなく、ニコニコしながら「チーノ」」「チーノ」と来る。二・三回、これは明らかに悪意だなというのもあったけど。
 まっ、概ねは、万博のころの僕らが、外国人のこと見て、何でもかんでも「アメリカ人」って言ってたみたいなモノなんだろうね。

 で、どうせ「チーノ」なら、中華街に行かなければという気がした訳。
 ちなみにキューバには、日本料理店は一軒もないらしい。だが小さいながらも、中華「街」がある。
 華僑パワーはスゴイね。
 随分と差をつけられたもんだと感じながら、デカイ門をくぐった。
 が、肝心の中華料理屋がない!!
(正確に言うと見つからないということだと思う。多分)
 
 で、仕方ないからピザを食って帰ってきた。
 午前のツアーでは、この国もなかなかやるなーと思ってたので、何だか少しホッとした。
 (これって島国根性かね?)


 さて、キューバでは至る所で子供たちが野球をしている。布で作ったボールと材木のバットで。
 多分もう、30組くらいは見ただろう。
 それもキャッチボールではなくて、全部、バッターが打って、守ってる奴が拾いにいくという形式。
 要するにフリーバッテングね。
 (リナレスがよく打つ訳だ)

 で、夜はラテンアメリカン球場に野球を見に行った。 キューバの野球選手は別に毎日、練習ばっかりしてる訳じゃなく、ちゃんとプロリーグみたいなのがあり、TV中継もやっている。
 何と入場料は1ペソ(5円)。だが公式的には1ペソ=1ドルだから、観光客(回りを見渡す限り僕くらい)としては1ドル払った。この辺が難しい所だな。人によって物価が20倍になるんだもの。
 緑のチームと青のチームの試合には、3ー4万人入ってた。でも5円だと4万人でも20万円か。
 まさに国営娯楽って感じだね。




 野球について日本との違いは、熱狂的応援の仕方と、パワー&スピード。
 前者については、巨人阪神戦に韓国野球の踊り応援のノリを加え、さらにサッカーのリズムで味つけした感じ。配球や人事、傭兵みたいなチマチマしたことを話題にしてるお客なんて、多分、一人もいないな。ひいきのアイドルが活躍するかどうかだけって感じ(歌舞伎や大相撲みたいに)。
 後者については、松井くらいのパワーのあるイチローが、18人いるというイメージ。運動能力そのものの差を感じるな。10日ほど前、甲子園のGT戦行ったけど、ノックの時の球回し見ただけで、燕と鳩くらい、切れ味に差があると思うもの。

 でも、3回のうち1回だけだったら勝ちにいく方法はあるかも。
 というのは、結構、球の扱いが雑。
 きっとガキの頃にキャッチボールやってないからだな。
 千本ノックやうさぎ跳びも。
(さっきもパスボールとライトの後逸で2点入った)

 でも、リナレスは絶対、日本には来ないな。
 やっぱり、アマチュアとして自国で尊敬され、頂点にたっているって大きいよ。
 まず、お金の問題じゃない。
 高橋尚子だって多分、世界最強だけど、野茂なみの給料欲しいと思ったことなんてないと思う。
 あるいは王や長島は30越えてから、晩節を汚すリスクまで犯して、大リーグ行って稼ぎたいとは考えなかったと思う。
 ごく自然な思考として。
 それと同じこと。
 ただし、今後、野球選手が、「国策」として日本との交流のための贈り物にされる時代はくるかも知れない。
 トキやパンダみたいに。
 何せ彼らは、個人事業者ではなく公務員なんだから。
 金が欲しい奴は、とっくに亡命してるだろうしね。

 個人的にはこれで、日本、アメリカ、韓国、台湾、キューバと5か国でプロ野球を観戦。
 なかなかいないでしょ、じぇんぶ生で見たことがある人。
 近鉄バッファローズでいいから雇ってくれないかなあ。
 
 21時からのゲームが終わったのは0時前。
 帰って来たら、ロビーで初めて売春婦と思われる女から声をかけられた。いる所にはいるんだね。
 もちろん、何もしなかったけど。


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